第7章 更木の剣八
「ふふっ……はははっ」
更木の街には不釣り合いな笑い声に、私たちはさっきまでの会話を中断した。
『…どうやら、見つけたようね』
「誰だァ!!?」
すると、さっきの失礼な発言をした男がダッと走り出した。
『追うわよ、蘭!』
「うぇっ?!ちょっ、ちょっと待ってよ!」
すぐに私たちもその男の後を追う。
暫く走った先の角で曲がると、そこには道に絵を描く桃色の髪の可愛らしい少女がいた。
「……なっ?」
声の招待がここまで幼い少女なのが意外だったのか、男は驚いていた。
「…子ども?でも、こんな小さな子がどうしてこんな所に…」
驚く私たちに気づいた女の子がこっちを見る。
「帰った方がいいよ!今日は剣ちゃんの機嫌がいいから!あんたたち、絶対にやられちゃうよ?」
「「…っ!」」
少女の言葉に対して、二人とも馬鹿にされたと感じたのか怒りを顕にするが、蘭より先に男が言い返した。
「はっ!…機嫌がいいからやられる?意味が分かんねぇなぁ!」
少女は相変わらず絵を描く手を止めずに言った。
「頭悪いなぁ…機嫌がいいとね、手加減しなくなるから!楽しんじゃうから!」
少女の言葉が暗にその剣ちゃんなる人物がその男よりも強いと、手加減しなければ死んでしまうほど力に差があると言っていると察したのか、ついにその男はキレた。
「なんだとぉ!!?」
男は少女に向けて刀を振りかぶった。
おっと、それは不味いんじゃないかな?
蘭がアイコンタクトで止めるかどうか聞いてくるが、ここで蘭が出ていって変に相手に警戒されては試験に支障がでるので、ここは私が。
ガッ
少女に振り下ろされるはずだった刀は抜刀した私の刀にぶつかって止まった。