第6章 訃報
《だって…ずっと泣いてるじゃない》
ピクッと身体が反応する。
『泣いてない……』
そう、だって私はあれから一度も泣いてない。
《華の心が泣いてるんだ》
『だからッ…泣いてないって!!』
思わず声を荒げてしまった私。
『私は…私は強くならなきゃいけないの』
強くなって兄に認めて欲しい、それが私の願い。
兄がいなくても、認めてくれる人がいなくたって強くなるんだ。
『悲しくなんかない…』
絞り出した声は私が思っていたよりか細かった。
《悲しまないことは強さじゃない。たしかに、強くなることは華にとってはとても大切なことかもしれない…けどね、正直な華の弱さを隠すためだけにある強さなら……そんな強さはいらない。もっと自分の心に正直になって。僕はね、華の弱い所もひっくるめて華のこと全部知りたいんだ》
麒麟の言葉が私を優しく包み込む。
『やめて……』
私を甘やかさないで。
じゃないと…
《泣いていいんだよ…》
じゃないと…
《大丈夫…ここには僕しかいないから》
ポロッ
『う…うわあああああん』
せっかくの決意が崩れちゃうから。
麒麟の言葉に、私は堰を切ったように泣き出した。
そんな私を麒麟はギュッと優しく抱きしめて、ポンポンと子どもをあやすみたいに背中をたたいてくれた。
『お兄ちゃんッ…お兄ちゃんッッ』
それから私は、ずいぶん長い間うわ言のように兄を呼びながら泣いた。