第6章 訃報
そんな事をただひたすら考え続けていた時、突然頭の中に直接話しかけてくるかのように響く柔らかい声が聴こえた。
《_______________華》
その声の主を認識した次の瞬間、周りの景色が一変し、私は精神世界である湖畔に立っていた。
『……麒麟』
そう、私の名前を呼んで精神世界に引きずり込んだ張本人は麒麟だった。
《や!》
片手を挙げて優しげな笑顔を見せながら佇む麒麟。
しかし、今日の精神世界はいつもと少し違った。
『ねぇ、麒麟…今日はどうして雨が降ってるの?』
今、私の精神世界ではしとしとと雨が降っていた。今まで雨が降っている所なんて見たことなかったのに、精神世界にも雨がふるんだろうか。
《うん…今日は雨が降ってるんだ》
手のひらを上に向けて雨を受ける麒麟。
《精神世界でも雨が降るのか、とか思ったでしょ?精神世界はね、実は現実の世界よりとっても不安定なんだよ。だって精神世界は君の心を写したところだから。人の心は脆くて儚いからね》
『私の心を…?』
初めて斬魄刀の名を聞いた時から何度となくここには来たけど、それはぜんぜん知らなかった。
《この世界にも雨は降る。君が心乱せば空は曇るし、君が悲しめばいとも容易く雨は降る。その雨を止める為なら、僕はどんな力も君に貸すよ。僕を信じてくれたなら、僕はこの世界にどんな雨も降らせはしない。》
『…私が悲しんでるっていいたいの?』
そんなことない。
私は、私は悲しんでる場合なんかじゃないんだ。
死神になるにはもっと、もっと強くならなきゃいけないんだ。
悲しくなんかない。
悲しくなんかない。