第6章 訃報
「ようやくその人を見つけたのは、隊士の死亡届一覧の中でした。それがちょうど昨日の話でス。家族構成に両親の他に妹が一人と書かれてあったので確信しました。華サンから聞いた流魂街の事件とも照らし合わせて、あなたのお兄さんだと。」
『死亡届…ですか……?』
「はい。本来隊士が何らかの事情で死亡した場合、遺族にはそれを報告する義務があるのでスが、彼の場合、両親は虚の襲撃事件で死亡、妹は死亡の確認のみ取れていないがほぼ死亡で断定となっていたので話が行くことなく終わってしまったのだと…」
その後のことはあまり覚えていなくて、喜助さんはあの後も何か二言三言喋っていたようだったけど、ほとんどは私の耳には入ってこなかった。
どうやって喜助さんと別れてどうやって蘭のところに帰ったのかもよく分からないまま、気づけば次の日の朝になっていた。
「お姉ちゃん!今日は私、秘密の特訓をするから私のお勉強は見てくれなくて大丈夫だよ!」
今朝は蘭が珍しくそんな事を言ってきたので、幸いな事に一人になることができた。正直なところ、今は一人になりたい気分だったからありがたかった。
「じゃあ、お姉ちゃん!私はちょっと離れた所で特訓してるからぜぇーーーーったい、ここから動いちゃダメだからね!!」
そう念を押してから蘭がいなくなった後、一人になった私は何をするわけでもなくなり、時間を持て余していた。
兄の死という現実を知って気付いたことだが、私が死神を目指した理由の大部分は兄だったし、両親の死のあとからは死神になれば兄と再開できるという思いが死神になるという目標の大部分を占めていたのだ。
その理由も無くした今、私の中に残ったのはポッカリと心に穴が空いたような虚無感と形容し難い脱力感だけで、不思議と悲しいという感情は生まれなかった。
とにかく今は何をする気も起きない。死神になるとか、誰かを守りたいとかそんな綺麗事には微塵も興味が湧かなくなってしまった。
所詮私はその程度の人間。身内の死程度で目標も気概もなくしてしまうような私なんて死神の器じゃない。