第6章 訃報
「お久しぶりでス、華サン」
私が声をかけると喜助さんはニコッと笑ってそう返してくれた。
その普段通りのはずの笑顔に私は何故か言い得ぬ違和感を覚えた。
『今日はどうしたんですか?』
しかし、その違和感の正体に私はすぐに気づくことになる。
「今日は華サンにお話があって来たんでス…」
さっきまでとは一変して真面目な顔つきになる喜助さん。
そうだ、さっきの喜助さんの笑顔のほんの少しの強張りが違和感の正体だったんだ。
いつもなら喜助さんはそんな笑い方はしない。
私の中に漠然とした不安が広がった。
『話?私にですか?』
「はい…できれば2人きりがいいんでスけど…場所、変えても?」
2人きりで話がしたいという喜助さんに私の中の不安は更に大きくなった。
『…はい』
私たちはさっきの場所に蘭を残して、そこから少し離れた場所で向かい合っていた。
「単刀直入に言いまス。華サンには護廷十三隊にお兄さんがいましたね?」
兄のことを言われドキッとする。
『…はい』
静かに答えて喜助さんの言葉を待つと、彼は少しだけ間をあけてから言った。
「…華サンのお兄さんですが、
現世任務の最中に殉死されました」
『……………………そう…ですか……』
真っ白になりかけた頭で、やっと紡ぎだせたのはそれだけだった。
喜助さんは続ける。
「初めて華サンにお会いした時に何̀か̀が引っかかったんでス。その時はあまり深く考えなかったんですが、後々になって何が引っかかったのか思い出したんでス…」
『…』
私は何も返せなかった。何を返していいかも分からなかったし、とにかく頭の中にいろんな想いが混在し過ぎてよく分からない状況だった。
「私が引っかかったのは水無瀬という苗字だったんでス。どこかその苗字に聞き覚えがあったと思い出してから、私は水無瀬という苗字を持つ人を護廷隊士の中から探し始めました。正直、かなり苦労しましたし、時間もかかりました。何せ護廷隊士となるとかなりの人数がいまスから…」