第5章 隠密機動
浦原さんはさっきの一撃で終わったと思っているからか、油断しているのが目で見なくてもわかる
始解するなら今しかない!
完全に仕留めるためには…
私は立ち上がり、解号を叫んだ
『吹き荒べ『白虎』!!』
解号を唱えると普通の刀だったものが、あっという間に形を変え、白銀の扇へと変化する
使うのが初めてでも、不思議とその使い方が手に取るようにわかる
私が扇を一振りすると突風が巻き起こり、私を包んでいた砂塵はあっという間に霧散した
晴れた視界の先には、驚きのあまり目を見開いた浦原さんと夜一さんがいた
「し…始解…?!…」
浦原さんはさっきまでの余裕から一変、かなり動揺している
「まさか…斬魄刀だったとは……それよりも、なんじゃこの始解をしてからの異様なまでの霊圧の昂りは!?」
夜一さんの言葉で妙に納得がいったこの感覚
道理でさっきから体中から力が漲ってくるはずだ
始解をした事で私の戦闘スイッチが入ったのだろう
勢いのまま、まだ固まったままの浦原さんにさっきよりも数段早くなった瞬歩で攻撃を繰り出した
捉えた、と直感した
が、手応えは無かった
風の刃を纏った扇はその勢いのまま空中に取り残された羽織りを引き裂いた
「今のはちょっと危なかったっス…私も本腰入れないとやばいでスよね、これ」
浦原さんはそう言いながらも、さっきの私の攻撃を完璧に躱していた
「今の…どうなったの?……お姉ちゃんが攻撃したと思ったら、羽織りしかなくて…えっと…」
「今のは隠密歩法“ 四楓”の参『空蝉』といっての、我々隠密機動の専売特許である歩法の技の内の一つじゃ。まあ、瞬歩の応用版ってところかの〜。習得するにはちぃ〜っとばかし難易度か高いがな!」
頭の上にはてなマークを浮かべる蘭に夜一さんが丁寧に説明する
「うつせみ…おんみつきどう…かぁ〜。すごぉーい!やっぱりすごいなぁ〜死神は!」
嬉嬉として戦いを見つめる蘭に意味ありげな視線を投げる夜一さん
「(その年でこの戦いを目で追えているだけで、お主も相当末恐ろしいがな…)」