第5章 隠密機動
「ふむ…良い動きじゃ」
夜一さんが感嘆の声をあげる
「いやぁ〜、正直驚きッス!ここまで動けるとは!」
浦原さんはしっかりと間合いを保ちつつ話しかけてくる
飄々としてて、油断してそうに見えても実は全く隙がない
子ども相手にと馬鹿にしていても隙はそう簡単に作らない
本当にすごい人だと思う、まだまだ私には実力が足りないということも
けど、始解すれば…!
まだその時じゃない、戦闘中の張り詰めた糸の中の一瞬の綻び、そこを狙う!!
『ありがとうございます!本物の死神さんに褒めて貰えるなんて、お世辞でも嬉しいです!』
「いえいえ!ホントでスよ!………まぁ年のわりには、でスけどね」
『……え』
浦原さんがそう言い終えた次の瞬間、浦原さんは私の目の前から消えた
いや、消えたというのは正しくない
事実は消えたように見えるほどの速攻
『なっ!……消えっ!?』
そう、消えたという一瞬の驚きと狼狽が私に隙を作った
「終わりでスっ!!」
浦原さんはその一瞬の隙をついて私の懐に入り込み、拳を繰り出した
『…ガハッ!!』
その拳は見事に私の鳩尾に命中、私の体はその拳の勢いで数メートル先まで吹っ飛び、背後の木に叩きつけられた
バキバキッと私のぶつかった木が倒れる
「お姉ちゃんっ!」
蘭が焦ったような声をあげる
相当激しくぶつかったから心配してくれてるんだろう
「喜助…お主は手加減という言葉を知らんのか?」
夜一さんは夜一さんで心配してくれてる…
「さっさと終わらせてしまっては面白くなかろう!」
はず……
「いやぁ〜、私も子どものお遊びに付き合ってられるほど気長な性格でもないんて、つい!」
ついって、アンタ…
さっきの攻撃すごく重かった、一瞬持ってかれそうになった
まだ体は痺れてる、けど、動けない訳じゃない!
さらに、衝突の衝撃で砂塵が舞い、私の姿は上手い具合に浦原さんから見えなくなっている