第5章 隠密機動
ドオォーン
蘭の鬼道が見事に直撃した虚は
塵一つ残さず消滅した
これで蘭にも自信がついて更に精進するだろう
私は刀を鞘に収めて一息つく
そう、私は気づいていなかった
虚との交戦で辺りに細心の注意をはらって
警戒していたのにも関わらず
「いや〜お見事っス!!やっぱりアタシの
思った通りでしたよ」
『…っ!?』
木陰から緩慢な動きで出てきたその男の人は
明らかにさっきの戦いを見ていたであろう
口ぶり
その男の後ろから更にもう一人
露出の高い服を着た女の人が出てきた
「ふむ…たしかに、面白い!」
ニカッと豪快に笑う女の人
二人とも今のいままでずっと私に
気配を悟られなかったことから
相当の手練だと分かる
『あなた達はいったい誰?』
いつでも動けるように刀の柄に
手を掛ける
「まあそう警戒するな!それより…「お姉ちゃんっ!見てた!?私、初めて虚を倒したよ!すごいでしょ!?」
女の人の声を遮って興奮した様子の蘭
虚を倒したのがよっぽど嬉しかった
のか、周りのピリピリした雰囲気に
全く気づいていない
私のところに駆け寄ってきた蘭が
ようやく二人の存在に気づく
「この人たち誰?」
『えっと…』
誰とも答えられないので口ごもる私
「そうじゃな…なら、挨拶がわりに…」
『「……っ!!!」』
女の人は少し考えると
いきなりその霊圧をあげた
身体がいっきに重くなったように
錯覚するほど凄まじい霊圧に
私は蘭を抱えて瞬歩でその場から
逃げ出した