第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
しかし、女の子は返答することなく僕を見据えた。どうやら、僕の決断を聞きたいようだ。僕は近藤さんを見た。
そして……近藤さんが頷く。僕は刀を鞘に収めた。その行為により、女の子は近藤さんへと近付いていく。
「ありがとう。その……これは、飲めばいいものなのかい?」
「えぇ。本当に……何もご存知無いのですね。直に毒は消えますが、体の痛みは直ぐに無くなるものではありません。何処かで休んだ方がいいかと思います。」
近藤さんは小瓶の蓋を取り、一気に赤い液体を流し込んだ。そして……不思議そうな表情をする。
「……甘い?」
「えぇ。それと……お節介ついでに、私たちと森を抜けませんか?」
女の子の提案に、近藤さんと僕は首をかしげた。そう……女の子は、「私たち」と言ったからだ。つまり、連れ合いがいる。
「君に仲間がいるのかな。」
「はい。待ち合わせをしています。」
近藤さんも僕も全てを信じることは出来ないが、女の子の提案を受けることにした。その場で体を休め、少し楽になったらしい近藤さんの言葉で出発をした。
暫く歩き続けていると、茂みから何かが飛び出してきた。その相手を見て、怪訝な顔をする近藤さんと僕。
しかし、女の子はその相手を怖がることなく、手にしていた杖を振りかざし叩き付けた。一瞬で消えてなくなった……さっきとは形は同じだが、色が異なる怪物。
前とは違い、後には何も残らなかった。何処と無く残念そうな女の子。ひょっとして、さっきのキラキラした虹色の何かを求めていたのだろうか?
「聞いてもいいかな。その下げている入れ物、何が入っているの?」
僕の質問に女の子は、簡単に中身を見せてくれた。その中には、キラキラした虹色の何かが幾つか入っていた。
「それはさっきの……。ねぇ、それは何に使うものなの?」
「薬剤の材料です。ひょっとして、さっき拾ったのが……。使用用途を知らなかったからあんな場所にあったのですか……納得しました。」
どうやら、さっきのキラキラした虹色の何かを女の子が拾っていたらしい。換金できるし、薬の材料としても使えるようだ。
「知らなかったとは言え、私はこれを拾ったので材料費として町まで貴方方を案内します。その前に、泉に立ち寄ります。」