第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
ゆっくりとした足取りは、近藤さんを気遣ってのものだろう。それにしても、女の子がこんな森に一人で入るのは無用心ではなかろうか。
しかし、さっきの対処の遣り方は慣れたものに見えた。それに、怪物の存在を知っている。且つ、出てきて当たり前かのような態度だ。
他にも、色んなことが分からない。どうして僕と近藤さんだけがここに居たのかとか。怪物の正体のこととか。対峙することに躊躇いのない、女の子の行動のこととか。
…………本当に、アレは毒消しなのだろうかとか。
頭の中で、質問がグルグルと回っている。今後、僕たちはどうすればいいのだろうか?どうしなければならないのだろうか。
やがて、森の中に静かに佇む泉へと出た。綺麗で透き通った泉を覗きこみ唖然とした。理由は、透明度の高い泉の底に、女の子の姿があったから……。
そして、その女の子はまだ息があるようだ。僕は咄嗟に泉の中に飛び込み、水中にゆらゆらしている女の子へと泳ぐ。
(綺麗な子…………)
僕は女の子を抱え、水面に向かい泳いだ。女の子の体の温もりが、腕から感じられる。そして、浅い呼吸を感じられた。
「……プハァ…………この子を引き上げて下さい。まだ、生きています!!」
「あぁ、分かった!!」
近藤さんが引き上げようとしたのを、同伴していた女の子が止めた。そして、女の子を見て溜め息をついた。
「相変わらずね……。……、起きなさい。あんなに人を驚かせてしまうから気を付けてって言ったのに……。??」
どうやら、知り合いらしい。それも、こういうことが普段から起こりうることのよう。女の子の言葉に、僕の腕の中にいる女の子の瞳が薄っすら開く。
「……す……れ?」
「えぇ、そうよ。早く起きなさい。」
「ん…………分……った……。」
寝ぼけ眼を擦りながら、ゆっくりと体を伸ばし…………そこまでして、僕の存在に気付く女の子。綺麗な瞳が僕を見詰めた。
「えっ…………あ、私を…………助けようと?ありがとうございます。」
緊張感の欠片も見受けられない、それはそれは穏やかで優しい笑みを僕へと向けた。本当に拍子抜けするほど、柔らかい笑顔。