第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
どうやら、近藤さんはいきなり現れた人成らざるモノに液体をかけられたとのこと。咄嗟に避けたものの、少しだけ足にかかってしまったらしい。
そして、近藤さんの足は黒く変色していた。痛みが酷いのか、苦痛に眉間に皺を寄せている。
「近藤さんは下がってて下さい。直ぐに始末しますから。」
相手は人成らざるモノ。斬り捨てられるかも分からない。そして、敵前逃亡は御法度。僕は間合いを詰めて、飛び掛かってきた敵を素早く斬り捨てた。
「えっ…………消えた?ん?これは…………。」
斬り捨てた怪物は消えてなくなり、代わりにキラキラした虹色の何かが落ちていた。怪物の色とは売って変わって、目を惹く綺麗なモノだった。
興味をそそられはしたが、僕はそれに触れることはしなかった。そんなことより、近藤さんへと駆け寄る。
「近藤さん、大丈夫ですか?」
「痛みが……酷い。身体中に…………グッ……。」
「…………すみません。僕が離れたばかりに……。」
しかし、近藤さんは首を横に振った。そして、優しく笑った。痛みを堪えたものだったのが、明確に見てとれたが……。
「これは、俺の不手際だ。総司の責任ではない。それより、この場は危険だ。」
僕は近藤さんに肩を貸し、その場から歩き出した。そして…………痛みに堪えながら歩いていた近藤さんだったが、やがて、その場に倒れ込んでしまった。
顔には脂汗をかき、体温も高くなってきている様だった。僕たちが途方に暮れかかっていた時、何かの気配を感じた。
僕は、気配がする方に向かって刀を構えた。また、訳の分からない怪物が現れるのだろうか?
しかし、その場に現れたのは怪物などではなく人。初めて目にする衣服を身に纏い、歳は僕より少し下の女の子だった。
「君は……人だよね?」
自分でもおかしな事を口にしているとは分かってはいる。でも、聞かない訳にはいかなかった。
女の子は僕の問い掛けに、スッと目を細めた。不審者を見るような目付きだ。が、その女の子の視線が近藤さんへと向けられた時、大きく目が見開かれた。
「こんな場所で、何をやっているんですかっ!!」
近藤さんへ駆け寄ろうとした女の子に、僕は刀を向けた。得体の知れない者を、近藤さんに近寄らせる訳にはいかない。