第2章 水面に映る女神様 ~沖田 編~
「…………っ…………じ…………うじ。総司っ!!」
僕の目覚めは悪い。でも、今だけは違った。何故かと言うと、僕を呼ぶ声の主が誰か分かったから。僕の全てだと言ってもいい…………近藤さんの声。
目を開れば視界に入ってきたのは、想像通りの近藤さんで心配そうな表情をして僕の顔を覗き込んでいた。
「近藤……さん。」
「目が覚めたか。良かった……。」
明確に安堵した様子の近藤さん。そして、僕は次の瞬間……見慣れない風景が目に入ってきて驚く。
「ここは……?」
「俺も分からん。だが、総司だけでも一緒で良かった。」
近藤さんの言葉に、僕は周りを見回した。そして、ここに存在するのが僕と近藤さんの二人だけだと言うことが分かった。
「えっと…………どうしてここに?確か、屯所でお酒を飲んでいたんじゃ?」
「あぁ、俺もそう認識している。だが………いつの間にか、こんな場所に……。」
暫く周りを見回したが、全然見覚えのない場所だ。そして、ここは……森の中。今はまだ明るいが、その内日が沈む。
見知らぬ森の中では、どんな危険があるか分からない。一先ず僕たちは、見当もつかないままだったがその場から歩き出した。
どれくらい歩き続けただろうか。何も出てこないし、勿論、人もいない。気配を探ったが、何も感じない。
「参ったな……。」
「近藤さんは少し休んでて下さい。僕が辺りを調べてきますから。」
「分かった。頼む。」
この時、僕の判断が後悔することになるとは、想像もしなかった。僕は注意深く辺りの気配を探りながら、歩き進めた。
近藤さんと離れて、まだそんなに時間は経ってはいない。……が、近藤さんの声が聞こえてきた。僕は急いで近藤さんの元へと戻った。
「近藤さん大丈夫ですかっ!!」
「総司…………グッ。」
「何かあった…………な、何ですかアレは……。」
近藤さんが対峙していた敵は、初めて目にする人成らざるモノだった。水の雫のような形をしていて、色は真っ黒。そして、何か液体のようなものを飛ばしてきた。
「避けろ、総司!!」
近藤さんの言葉に、僕は咄嗟に避けた。液体がかけられた場所に目を向けると、その光景を目の当たりにして驚愕した。
「草が…………枯れた?」