第31章 寝てる(SM)
「翔くん?」
楽屋で、新聞を読みながら
うつらうつらしてる翔くんに声をかけた。
「……ん?なに?」
だいぶ、間、あったけど。
疲れてるんじゃない?
少し横になったら?
なんて、言えるわけもなくて。
「…いや、なんでもない」
また、うとうとし始めたから
ゆっくりと
翔くんに近づいて
少し距離を置いて
ソファに並んで座った。
ふと、隣を見ると
翔くんは完全に寝ちゃったみたいで。
「…翔くん?」
ほら、返事もない。
少しだけ近づいて
そっと、
手から新聞を抜き取ってみても
起きる気配なし。
「ねぇ、横になった方がいいんじゃない?」
囁くような声は
届くはずもなくて。
ソファに凭れて
寝てしまった翔くんに
近くに脱ぎ捨てられてた
パーカーを掛けてあげた。
すると、
翔くんの腿の上にあった翔くんの手が
すとん、とソファの上に落ちてきて。
自分の手との距離が
数センチくらいになって。
勝手にドキドキして
もう1度、
「翔くん?」
って声をかけたけど
起きそうになかったから
翔くんの手を覆うように
パーカーを少し広げ直して
そこに自分の手を入れて
かすかに開かれている掌に
自分の指を重ねた。
じんわりと、
温もりが指に伝わる。
すると、
翔くんの手に少し力が入って
掌に置いた指を
きゅっと、握られた。
気がした。
びっくりして、
翔くんの顔を見たけど
起きてるようには見えなくて。
ゆっくりと、
翔くんの手から離れて
再び
パーカーの中に手を忍び込ませる。
今度は、翔くんの脇から腕を通して
そろそろと、
翔くんの手と、自分の手を重ねて
指を絡ませて。
自分から
少し力を入れてみる。
そうすると、また、
翔くんから握り返された。
あぁ、翔くんと、恋人繋ぎ…
「潤、」
耳元で
翔くんの声が聞こえて、
慌てて翔くんの方を向くと
そのまま唇が重なった。
触れるだけのキスから
僅かに開いた隙間から
翔くんの舌が入ってきて。
ゆっくりと、唇が離れて
お互いを銀の糸が繋いだ。