第13章 きっかけ(SO) ⅰ
(not a real)
俺は今、男の人と付き合ってる。
恋人として。
出会いは、ごく普通の感じ。
…普通でもないかもしれない。
俺がバイトしてたカフェの
常連さんが翔くんだった。
あまりに頻繁にくるから、
客と店員という関係として
仲良くなった。
お客さんが少ない時は、
少し話したり、とかね。
連絡先交換とかはしてなかった。
あくまで、客と店員だからね。
でも、ある日
街で偶然翔くんを見かけたんだ。
翔くんは、女の子と歩いてて
俺はひとりで買い物してた。
声をかけようにも
反対の道路にいたから、かけられなくて。
翔くんは、俺に気づいてなくて。
なぜか少しだけガッカリして、
翔くんとは逆の方向に歩いてた。
そしたら、
後ろから、誰かが走ってくる音がして
端に避けようとしたら
肩を叩かれた。
「お、おの、さん、っ
はぁ、はぁ」
翔くんだった。
「えっ?櫻井さん、な、どうしたんですか?
だってさっき、あっち、行った…
っていうか、俺に気づいてたんですか?」
「(息切れハンパなくて喋れず、手をあげて)
(ちょ、待って)」
「(察し)どんだけ、全力で走ってきたの(笑)
…なんか、飲み物買ってきましょうか?」
「っはぁ、大丈夫、
ふぅー、あー久々に全力で走ったぁー」
「ふふ(笑)
さっき一緒にいた女の子は大丈夫なんですか?」
「あぁ、あれは、大丈夫です」
「…カノジョさん?」
「違います、ただの友達です。
大野さん、どっか、入って話しません?」