• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第6章  だから俺だけをずっと (R18:及川徹)



 例えばこれが、物語だとして。

 私たちの選んだ道は本当に正解だったのだろうか。ずっとそう自問していた。確信が持てないまま、ただ毎日を生きていた。

 でも、いまは、思う。

 これでよかったのだと。
 胸を張って、そう思える。


「カオリ、……っキス、して?」

「ん、……徹、く……んんっ」


 セックスなんて、お金のためだった。
 愛なんて、客をおとす道具だった。

 でもそれは違ってた。

 だれかと肌を重ねるという行為は、だれかを愛そうとするその勇気は、こんなにも尊い。

 尊くて、あたたかい。
 私たちが生きている証だ。


「俺たち、ひとつだね……カオリ」

「……っ、うれしい?」

「……うん、俺ね、今すごく幸せ」


 彼で一杯に満たされて、その愛を精一杯に包みこんで、私たちはひとつに溶けていく。

 愛してる。
 そう、囁きながら。


「ねえ、カオリ」

「ん? どうしたの、徹くん」

「……あのね、」


 彼は言う。
 照れたように、微笑んで。


「俺ね、ずっとカオリのそばにいたい。カオリにも、ずっと俺のそばにいてほしい」


 俺はずっとカオリだけを愛してるし、カオリにも、ずっと愛されていたい。

 でもね──

 それ以上に、カオリが愛されていてほしいんだ。俺ね、みんなに愛されてるカオリが、みんなの中心で困ったように笑ってる、そんなカオリの笑顔が。


「──だいすきだよ」

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp