第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
例えばこれが、物語だとして。
私たちの選んだ道は本当に正解だったのだろうか。ずっとそう自問していた。確信が持てないまま、ただ毎日を生きていた。
でも、いまは、思う。
これでよかったのだと。
胸を張って、そう思える。
「カオリ、……っキス、して?」
「ん、……徹、く……んんっ」
セックスなんて、お金のためだった。
愛なんて、客をおとす道具だった。
でもそれは違ってた。
だれかと肌を重ねるという行為は、だれかを愛そうとするその勇気は、こんなにも尊い。
尊くて、あたたかい。
私たちが生きている証だ。
「俺たち、ひとつだね……カオリ」
「……っ、うれしい?」
「……うん、俺ね、今すごく幸せ」
彼で一杯に満たされて、その愛を精一杯に包みこんで、私たちはひとつに溶けていく。
愛してる。
そう、囁きながら。
「ねえ、カオリ」
「ん? どうしたの、徹くん」
「……あのね、」
彼は言う。
照れたように、微笑んで。
「俺ね、ずっとカオリのそばにいたい。カオリにも、ずっと俺のそばにいてほしい」
俺はずっとカオリだけを愛してるし、カオリにも、ずっと愛されていたい。
でもね──
それ以上に、カオリが愛されていてほしいんだ。俺ね、みんなに愛されてるカオリが、みんなの中心で困ったように笑ってる、そんなカオリの笑顔が。
「──だいすきだよ」