第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
last chapter
【epilogue】
絶望の中で、花を見た。
それは色とりどりの。
とてもとても、美しい花だった。
ある人は気高く、ある人は凛として。
夜に咲き、夜を誇る、常闇の花たち。
この、あまりに広い世界の、東の片隅の、どうしようもなく荒んだあの町で、俺たちは出会って。
意味もなく同じ場所に居て、意味もなく他愛ない日々を過ごして、意味もなく傷付けあった。
だけど、今は──
「京治さん、準備できた?」
「……ああ、うん、今行く」
彼らが繋いでくれた希望の空。彼らが守ってくれたひと。彼らの想いに救われて、今がある。
あの日、あの夜から、一年。
辿りついた最果ての地で誓う永遠。彼らはもう、到着しているのだろうか。
「なんだかドキドキするね」
「そう?」
「うん、皆、もう来てるかなあ」
繋いだ小さな手は純白。
無邪気に笑んでいる花。
何よりも尊い、愛の証。
その全身を白に包まれた彼女は、目が眩んでしまうくらい美しくて。
「……綺麗だよ、カオリ」
俺がそう告げると、少しだけ、可愛らしい頬に桃色が咲いた。
辿りついた最果ての地。
街外れにある古びた教会。
そこで待つ、彼らの元へ。
「じゃあ、行こうか」
「走っちゃう?」
「お前が転ぶから駄目」
手と手を取り合って歩む道。互いに笑みを溢して歩む道。カオリと二人で歩む道。これからもずっと、こうして。
──共に、幸せを。
最愛【了】