第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
宴のおわりは、総じて惨事である。
笑い上戸はひたすらに笑い、泣き上戸はいくら慰めようとも延々とめそめそする。
小うるさい上司はクドクドと説教を垂れながすし、脱ぎたがりは生まれたままの姿に戻りたがるし、むっつりはエロが開花するのだ。
それはこの町の人間に限ったことではなく、どこの宴会でも見られる惨事なのだが──
「へへー、カオリーすきー」
黒尾は酔うとアホの子だった。
普段のよろしくない目付きをトロンとさせて、ひたすらにヘラヘラしている。言っとくがお前が抱きついてるのは私じゃなくて研磨だ。
私の、かわいい研磨を 離 せ 。
「俺、こんなのが幼馴染みで恥ずかしい……やだ、もう全部やだ……ふぇぇ」
研磨はお酒を飲むといつもこう。
両手でその可愛いお目々をこすって、さめざめと涙を流す。黒尾という痴漢から全力で守ってあげたい。
「あのな京治、お前はそもそも格好良すぎるんだよ。こう、なんつーの? 俺という先輩をもっとだなー……あれ、いまなんの話してたんだっけ?」
光太郎はバカだった。
酔ってても酔ってなくてもバカだった。でも酔うともっとバカになる。
ここぞとばかりに先輩風を吹かせているが、ほぼ何を言っているのか分からない。
「そんなことより、俺、……熱い」
京治さんは脱いでいた。
光太郎と黒尾に散々飲まさせられて、あられもない姿になっていた。普段大人しい人ほど酔うと大変なことになる。いやらし美しい腹筋である。
「……それで、僕とXXXXしたいの?」
蛍くんはもっと大変だった。
普段ほとんど感情を露わにしない彼が、隠語という隠語をマシンガンのように連射している。
ちなみに相手はエア彼女だ。
誰もいないはずの空間に向かって隠語の雨を降らせ続けている。彼にはそこに存在しないはずの誰かが見えているのだ。怖い。
そして二人仲良く床にブッ倒れている徹くんと岩泉さん。
このカオスをほぼ白目で見守る私。
収拾のつかない宴が、ひとり、またひとりと潰れていくことで、徐々に静かになっていく。