第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「俺は、……本当にたくさんのモノを奪ってきたからね」
ちょっと寂しそうに、彼は言う。
多くを奪った。
ひどく傷つけた。
償いきれるなんて思ってない。
今更遅いのも、分かってる。
「でもね、だからって何もせずに逃げるのは、違うと思ったんだ……こんなふうに思えたのはカオリのおかげだよ」
俺に愛を教えてくれた。
俺の、誰よりも愛しいひと。
カオリのおかげ。
ふわり。
徹くんが私を抱きしめる。
香るのはシャネルの五番。
甘くて、華やかで、強い。
夜を生きる人間にふさわしい香り。
「俺たちと一緒に働こう、カオリ」
俺と、岩ちゃんと、ううん。
ここにいる俺たちみんなと。
これからも、ずっと。
「一緒に生きてください。
──死が、俺たちを別つまで」
それは、彼が涙ながらに語ってくれたその言葉は、今までに聞いたどんな言葉よりもずっと。
ずっと、純潔で。
ずっと、尊い。
これ以上ない愛の囁きだった。