第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
そして最後にプレゼントをくれたのは、徹くんと、岩泉さんだった。
「……これ、……名刺?」
小さな純白の名刺。
薔薇の花をあしらったデザインのそれには、私の名前と【trust】という単語が印刷されている。
問いたげな顔で二人を見上げると、まず岩泉さんが笑顔を返してくれた。
岩泉さん。
私に、恋を教えてくれたひと。
「俺たち、会社を興したんだ」
「会社……?」
「花屋やるんだよ、夜専門の」
彼の真意を理解できない私。
自分の名前が書かれた名刺を手にクエスチョンマークを浮かべていると、次に徹くんが歌うように話しだす。
「カオリのような夜に生きる女の子たちのためにね、花を届けるんだ。バースデーイベントや、ナンバーワンのお祝い、元気がないとき、もう逃げ出しちゃいたいとき」
「依頼があればいつでもな」
「手短にまとめてくれてありがとう岩ちゃん。でもその言い方は全然ロマンチックじゃな……あいたっ! また蹴ったね? カオリにも蹴られたことないのに!」
「うるせえ黙れクソ川」
ああじゃない。
こうじゃない。
二人は痴話喧嘩しながら色んなことを話してくれた。
徹くんが何度も何度も謝りにいったこと。岩泉さんの家が埋め尽くされるほどの揚げだし豆腐を送ったこと。
「あれは正直マジ迷惑だった」
「あれが愛なの! 俺の!」
「……きっしょいな、お前」
そうしてようやく許してもらえた徹くんが、また二人で働こうと持ち掛けたらしいのだ。