第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「……今度一緒にいこうね」
研磨がくれたのは一枚のチケット。
何のチケットだろう。
そう思ってよくよく見れば、そこには世界一有名なネズミのイラストと【株主優待パスポート】の文字が輝いている。
そういえば研磨って超高級なハイタワーマンションに住んでるんだった。
VIPすぎるプレゼントに、周囲のお兄さんたちが「これだからボンボンは!」と悔しそうな顔をする。
「ニヤニヤしてると皺が増えるよ」
研磨にはセレブキャットのお耳をつけてもらおうと固く決意していると、今度は蛍くんの指でほっぺたを摘ままれた。
彼が紡ぐ言葉はぜんぶ紫。
小生意気な、毒の色。
「……ほら、これ、あげる」
でも、それは素直になるのが恥ずかしいからなんだよね。
蛍くんは私から視線を逸らしたまま、おずおずとワイヤレスヘッドホンを手渡してくれた。一緒に添えられたのは小さな長方形。
流行りの音楽プレーヤーだ。
再生ボタンを押すように促されたので、彼の言う通りにしてみる。すると再生されたのは──
【カオリさん、お誕生日おめでとう!】
そんな肉声からはじまる国民的アイドルHQV48の生歌ハッピーバースデーだった。
マジか。
マジなのか。
芸能人の底力に驚きすぎて、普段は冷静沈着な京治さんまでもが「これはすごいね」と感心している。