第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「抜け駆けしないでくださいよ」
そんな言葉で光太郎を退けて、京治さんが私の手をそっと握った。
驚いて視線をおろすと、左手の小指にはすでにブルーサファイアのピンキーリングがはめられている。
「この指輪を見るたびに」
ちゅ、と手の甲に落とされるキス。
「──俺を想って、カオリ」
あまりにもロマンチックすぎて、そして京治さんがスマートすぎて、私はおろかその場にいた全員が思った。
(か、かっこよすぎる……!)
少しだけ顎をひいて、涼やかに微笑む。澄んだ川のような笑顔。
「ったくハードル上げんなよ京治」
不機嫌な声をだして、黒尾は一旦店の外へ出ていった。すぐに戻ってきたかと思えば、その腕にはバイクのヘルメットが抱えられている。
彼によく似た、黒。
控えめに刻印された銀の文字。
──これ、私のイニシャルだ。
「泣きたいときは俺んとこに来い。いつでもドライブ連れてってやるよ、あ、あと飯は食え」
わかったな?
ばふ、と頭頂部に降ってくる手。大きな手。ぽんぽんとリズムを刻んでから、ワシャワシャッと頭を撫でる。
その影から飛びだしてきて私に抱きついたのは、お花みたいな匂いがする研磨のブロンドだった。
小麦畑のような、黄色。
いつだって私を癒してくれる。