第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
ひとしきり笑って、互いの肩を、背を、叩きあう彼ら。久方振りの再会に、会話の花が咲く。
そんな賑やかさのなか、抱えていた花束を差しだしてくれたのは、やはり岩泉さんだった。
視界が、虹色に染まる。
「誕生日おめでとう、カオリ」
見たこともない薔薇だった。
太陽のような橙。
澄んだ川のような青。
淡く色付いた桃は恋心を思わせて、燃えるような赤は愛を彷彿とさせる。
それから、可愛らしい黄色とちょっと生意気な紫が、びっくりするほど黒いブラックローズに気圧されて顔をしかめているように見えた。
「……これ、って」
「マジックローズ」
「え……?」
言葉を返したのは徹くんだった。
岩泉さんの隣に立って、こちらを見つめる彼。慈しむような眼差し。
ちょっと悔しいくらいに綺麗なその唇が、小さく笑う。
「それじゃ準備はいいかい、お前たち」
徹くんがぱむ、と手を打った。
私はまだキョトンとしている。
「偉そうに言うなよなー!」
しかめ面をするのは光太郎だ。
制服の胸ポケットから何かを取りだして、パッと笑顔を見せる。まぶしい、太陽のような笑顔。
「愛してるぜ! カオリ!」
彼が差しだしたのは、梟モチーフのネックレスだった。誕生日おめでとう、ではなく愛を叫んだ彼に、四方八方から野次が飛ぶ。