第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「じゃーん、主役登場ー!」
そんな彼の声が響いたのは、黒尾と光太郎が、京治さんの鮮やかすぎるフライパン捌きに愕然としていたときのことだった。
「う、わー、出た及川」
「クズ川」
「主役はカオリだろゴリラ」
野次が飛んだ。
おしぼりも飛んだ。
キメッキメのラメッラメのスーツで現れた徹くんは「誰いま普通に悪口言ったの!」とむくれている。膨らませた両頬のせいでフグみたいだ。
「カオリが主役なことくらい分かってるもんねーだ。でもそしたら彼氏である俺も主役じゃん。ていうか俺はゴリラじゃないし、仮に俺がゴリラだったとしても、それはイケメンのゴリラだし?」
早口言葉かよ。
どんだけ滑舌いいんだよ。
二枚舌野郎。
つーかうるさい。
各々がそれぞれの雑言罵倒を思い浮かべるなか、寸分狂わず美しくセットされた徹くんの前髪が揺れた。
ドンッ、と背を蹴られて。
「あいだっ! もう!」
徹くんの後ろに、もうひとり。
「何すんのさ岩ちゃん!」
──岩泉さんがいる。