第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
『え、一年?』
『そう! 俺とカオリが出会ったあの日から、今日で一年なんだよ。だから今日が、カオリの誕生日』
ね? もう決まり!
京治さんとの電話を終えたあと。
事情を聴こうとかけた電話の向こうで、徹くんは笑っていた。
聞けば、私と関わりのあった人たちに謝って回っていたらしい。だからここ最近帰りが遅かったのか、と合点がいく。
『あいつらね、俺のこと見た途端に殴ろうとするんだよ? もーやんなっちゃう! でもねでもね、カオリの誕生日だからっていうと、──笑うんだ』
やさしい、やさしい声だった。
そっと涙をこぼす17:00。
てっきり一緒に京治さんのお店へ向かうのだと思って、ひとり、彼を待つ。
役目を終えようとする太陽が群青のカーテンを降ろして、月がぼんやりと光りだした。
そんな、夜のはじまりのことだった。
『及川様よりお荷物が届いております』
自宅にやってきた郵便屋さん。
その手には、ひとつのプレゼント箱。
JILLSTUARTのロゴが躍るその箱には、それはそれは美しい純白のパーティドレスが入っていた。
同封された小さなメモにまたひとつ、徹くんの字を見つける。
【先に行ってて!】
主役(俺)は遅れていくものだから☆と加えようとして、やっぱりやめたのだろう。消しゴムでこすった跡がある。しかも全然消えていない。
ふふ、と笑みがこぼれた。
彼らしい。
茶目っ気があって、女の子を喜ばせるのが上手で、そして、私をこれでもかと愛してくれる。その愛を隠すことなく、全力でぶつけてくれる。
やさしい、やさしいひと。