第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「なぜアンタがここにいる!?」
今日も格段とかわいらしい研磨、の右隣にちゃっかり着席してるメガネくん。かつて私を「おばさん」呼ばわりした小生意気なファッションモデルである。
ちなみに名前はKEI。月島蛍。
「ていうかいつからここに……?」
「今さっきですケド」
問われたこと自体が不愉快そうに、蛍くんはレンズの奥で目を細くした。
それから億劫そうにお店の裏口を指して「僕は入口すら一般庶民とは違うので」などと憎たらしいことを言う。ぐうの音もでない。
「かわいくない奴」
「口煩いおばさん」
「……ぐうう!」
前言撤回。
ぐうの音がでた。
悔しさのあまり。
でも、来てくれたんだなあ、と思う。お仕事忙しいだろうに。憎まれ口ばかり叩いてるけど、根は優しいんだよね。
「来てくれてありがとう」
言いながら、席についた。
研磨の左隣。
蛍くんの反対側。
「研磨も、蛍くんも、久しぶり!」
カウンターのほうから、黒尾たちの声が聞こえてくる。「誰が一番かっこよくフライパンを振れるか」で小競りあいをしているらしい。
どう話が流れたらそうなるんだ。
「……カオリ、ちょっと痩せた」
ちらりと私をみた研磨がそう呟いて。
「そう? 老けただけデショ」
足を組みなおした蛍くんが毒を吐く。
変わらないなあ。
またひとつ、嬉しくなった。
老けたは余計だけど。
非常に、余計なお世話だけど。