第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
そんな折だった。
「おー集まってんなー」
気怠そうな声の主はそう言って、バイクの鍵をチャリンと鳴らした。お店の入口を見やればそこには黒尾が立っていて、その隣では研磨が小さく手を振っている。
「わああ、研磨! 久しぶり!」
「おい、俺は無視かコラ、おい」
「あと黒尾じさん」
「ハイ逮捕、マジ有罪」
一年振りに顔を合わせたのに口喧嘩しかしない私たちの横を、研磨がするると擦り抜ける。
迷わず奥のボックス席に腰かけた彼を追おうとして、足止めされた。
腕を掴まれたのだ。
目付きが非常によろしくない不良警察官、黒尾鉄朗に。
「痛い! 腕がもげる!」
「うっせえ、んな細っこい腕してっからだろ。ちゃんと飯食ってんのかよお前」
「今日も食べたよ? チョコ」
「それは飯じゃねえダロが!!!」
思いきりおでこを指で弾かれた。
でこ、ぴんっではない。
でこ、びんっ!!!だ。
「痛、っぐ、うう……巨人族め」
「黙れクソガキ愛の鞭だ」
まずい。
このままでは小うるさい黒尾の餌食になってしまう。
だってこの黒尾ときたら、光太郎に「ありったけ飯買ってこい」とか言って諭吉渡してるし、光太郎のレパートリーで買ってこられたらオンリー肉だし。
やばいことになる。
胃が破裂する。
よし、逃げよう。
やいのやいのと話しこむ彼らを尻目に、私はマイエンジェル研磨の元へと急いだ。しかし──