第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
なあ、何?
全体と行進ってなに?
尚も問いつづける光太郎を、京治さんが積極的にシカトする。
以前は同じ宿木にいた二人。
姿形は全然違うのに、その瞳に灯るオーラが同じ。
「何にも変わってない、二人とも」
至極嬉しそうに言った私を、二人が同時に見る。
「俺は変わったもんね! ほら!」
へへん、と胸を張って白いシャツを見せびらかす光太郎は、もう一度学校に通っていた。
通信制の学校に。
警察官になるために。
『カオリを泣かす奴から、カオリを護りたいんだ、俺──』
徹くんと同棲を始めてしばらくが経った頃、突然かかってきた光太郎からの電話。その言葉を聞いたとき、どれほどの愛を私は教えられただろう。
「俺だって変わりましたよ、ほら」
対抗するように左手をかざした京治さんは、ええと、想像しただけで痛いしその微笑が怖いし、あと、怖い。
でも、その内に秘めた優しさを、私は知ってる。
京治さんがバーテンダーで、私がお客さん、光太郎が高校生。もう成人だけど。皆変わったのに、変わってない。
変なカンジ。
くすぐったい。
これが幸せ、ってものなのかな。そう思う。思いたい。