第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「光太郎!」
「うああー! カオリだ! 本当にカオリ! 俺のカオリーーー!!!」
振り向いた私を、知らない柔軟剤の香りが抱きしめた。でも、光太郎の匂いもする。
相変わらず大きい声。
うるさいくらいの、笑顔。
この町で一番最初に出会ったひと。いつも一番近くで見守ってくれたひと。光太郎。私にとって、太陽のようなひと。
「会、……、か、っ……!」
「うんうん、私も会いたかったよ」
「〜〜〜……ふ、ええ……っ」
ああ、変わらない。
それがこんなにも愛しい。
声も身体も態度も誰より大きいくせに、泣くときは声を殺して泣く光太郎。
そんな彼の温もり。
私の腰を弄ろうとする、あったかくて大きい手。
──ん? 弄る?
「光太郎! ステイ!」
「い、……っ痛ででで! ツネんないで! 謝る、このとおり謝るからそんなとこツネんないで!」
この言い草である。
ただ手の甲をつねっただけなのに。すぐ卑猥なこと言おうとするんだから全く。
「ステイじゃなくて去勢したらどうですか。きっと治りますよ、万年発情期」
「京治くん冷たい! いつにも増して!」
「そういうアンタはいつまで経っても前進も後退もしませんね、光太郎くん」
「全体と行進?」
「あ、もういいです」
久々に見る二人のやりとりに妙な安寧を覚えて、クスリ、こぼれた笑みが温かい。