第1章 キミは宇宙の音がする (R18:灰羽リエーフ)
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あれから九ヶ月と、八日。
リエーフは毎日欠かさずに音楽室を見上げてくれた。時には直接ここを訪れて、私のピアノに耳を澄ましていた。
とても、美しい音だと言ってくれた。
『キレーな音っすね』
『まるで、絢香さんみたいだ』
夕暮れの音楽室。
茜色に染まる空。
私と、彼の、忘れじの思い出。
しかし今日、私が告げた【事実】によってこれまでの平穏は崩れ去り、心地よかったはずの世界は灰色に塗り替えられてしまう。
「私ね、……留学するの」
いまだ冬を引きずる三月上旬。
式典練習を終えた後の出来事。
私を含む三年生が卒業式を間近に控えた、ある寒い日のことだった。