第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
そうやって生きるしか術を知らないのだ。
ひとに優しくされずに人生を生きてきたから、夜の世界にしがみつくしかなくて。ここにしか、生きる場所が見つからなくて。
親がいない。
愛を知らない。
親がいても、通じ合えない。
お金がなかった。
死にたいくらい貧しかった。
ひどく餓えていた。
親友に裏切られた。
最愛に裏切られた。
なにも悪いことなんて、してないのに。もう誰も信じられない。
みんな、ひとりぼっちだった。
夜が怖い。
ひとりで過ごす夜が、どうしようもなく怖い。だから灯りに群がる。惹きつけられる。そうしてここへ辿りついて、出会うのだ。
みんなみんな、同じ。
肉欲のことしか頭にないと思われてもいい。風俗だと馬鹿にされても、ホストだと卑下されても、やくざだと忌み嫌われても、それでも構わない。
分かり合える友がほしい。
羽を休めるための宿木がほしい。
誰のことも信じられないのに、でも誰かに愛してほしくて、だから私たちはここにいる。この町で生きている。
ボロボロに傷つけあったけど、でもやっぱり一緒に生きていたくて、ここで生きている。
「許したし、謝ったよ、俺も」
「……そうだったんですね」
「カオリの為だからって泣かれたら断れないし、それに──」
「………?」
「俺もひとりは嫌いだからさ」
京治さんがぽそりと呟くように言って、私は泣いた。ついに堪えきれなくなった涙がポロポロ、滴になって落ちていく。
「お前にまた会えてよかった」
「……っ京、治、さん」
「会いたかったよ、カオリ」
ぶわわ、と視界がゆがむ。
思いきり顔をしかめて号泣しようとした、──次の瞬間だった。
「ヘイヘイヘーイ! 俺、参上!」
意識を貫いたのは、懐かしい声。