第6章 だから俺だけをずっと (R18:及川徹)
「でも寂しかったのは、ホント」
「信じてあげません」
「そう、それは残念」
再会の物語はこうして幕を開けた。
私がこの町に来てから一年。
今日は、ここで私のバースデーパーティが開催される。
その主催はもちろん【彼】なのだけれど、主役は遅れて登場するんだよ☆らしいので、彼はまだいない。主役は私ではないのか。いや、なにも言うまい。
京治さんが作ってくれたカクテルを一口、ちびりと飲んだ。
「それにしても驚いた」
「っ、え?」
「トオルが謝りにきたこと」
トオル。及川徹。
夜王とも称された元ナンバーワンホスト。この町で彼を知らない者はいない。
賛辞ではなく、悪評のせいだ。
その端正で甘やかな見目からは想像できないほど冷酷で、惨忍で、攻撃的。それが以前までの彼。
「土下座してたよ、彼」
「え゛……あの徹くんが?」
「そう、あの及川徹が」
思い返せば色んなことがあった。
本当に、散々だった。
たくさん泣いた。たくさん悩んだ。衝突して、嫌悪して、傷ついて、傷つけて。大切なモノを失ったこともある。最愛のひとを失ったこともある。
でも、それでも私たちは。
──徹くんと私だけではなくて、この町で365日を生きる私たちは、こうしてここで生きている。
互いの傷に、寄り添うようにして。