第5章 吐息を華に、恨みを添えて (R18:澤村大地)
「絢香、愛してる」
聞こえたのは愛のことば。
滑りこんでくる冷たさはダイヤモンド。小指で光るピンキーリングじゃない。左手の、薬指。
「俺には、お前だけだ」
それは私が求めて、求めて、求め続けたひと言だった。たったひと言。お前だけ。そのひと言を、どれほど待ち望んでいたことか。
「………私だけ?」
「ああ、絢香だけ」
「……嘘、じゃない?」
ぽろ ぽろ ぽろ
おちていく涙をあなたが拾う。
嘘じゃないよ。
そう言ってまたひとつ微笑んだあなたは、急にその表情を悪戯なものに変えて、こう囁いた。
「今夜は覚悟しておけよ?」
「…………えっち」
「男は皆そんなもんだぞ」
ふ、と笑みがもれて、私たちは同時に笑う。甘やかで、幸せな、大人の夜はまだ始まったばかり。