第5章 吐息を華に、恨みを添えて (R18:澤村大地)
熱い舌が、走る。
ドアが閉まるのを待つのも惜しいと、部屋に連れこまれてすぐ重ねられた唇。焦がれるほど愛した彼のキスが、頤(おとがい)を伝って下されていく。
「や、っ……ぅ、んん」
解れる。
肌蹴ていく。
紺色のシュシュで結わいたはずの髪はほどけ、スナイデルのブラウスが力尽くで脱がされていく。
「愛してるんだ、……絢香」
淫らなのに、切なげな、彼の声。
「お前を愛してる」
ホックの外されたタイトスカートが、するりと落ちた。暴かれた下肢には黒のストッキングしか残っていない。
ふと自分の姿を想像する。
ひどく恥辱的だ、と思った。
「……愛してる、だなんて、簡単に言わないで……! 私が、どれだけあなたを……っ」
問いたげな彼の顔。
私がなにを言おうとしてるのか分からない。こころの底からそんなことを思ってる顔。
どうして分からないの。
「……あなたが、愛してるのは」
ううん。そうじゃない。
「私を愛してる? ……私のことも、愛してる?」
ああ、頬が熱い。
なぜこんなにも熱いのかと不思議に思って、自らの頬を撫でる。
そっか。
私、泣いてるのね。