第4章 愛すべき泥濘で口付けを (R18:黒尾鉄朗)
「よく耐えました」
彼からそんな言葉が聞こえたのは、どろり、生温かいそれが流れ出たあと。
言葉のすぐあとに感じたのは痛み。
首筋に彼が噛みついて、私の肌にその牙を突き立てて、直後。
ちゅ……、と甘い赤痣を残す。
「痛かった?」
ひとつめの痣は首筋に。
「どこが痛かった?」
ふたつめの痣は乳房に。
「言えよ、ほら」
最後の痣は──……
『はあ? また喧嘩しただァ?』
『ったく仕方ねえなあ』
『ほら来い、黒尾さんが慰めたる』
『もしあいつが離れていっても、俺がずっとお前の側にいてやるから。だからもう泣くな』
頬にひと粒。
涙が、落ちた。
「黒尾、ごめん、……私、なにも……何も気付かなかっ……ごめんなさい、ごめ……っ、」
こころの痣が、じくり、痛い。