第4章 愛すべき泥濘で口付けを (R18:黒尾鉄朗)
*
そこに見知った彼はいなかった。
いつだって飄々としてて、どこか無感情で、でも優しくて、頼りがいのあるクラスメイト。私の大切な友達。
黒尾鉄朗は、もう存在しない。
「や、っ……痛、んぅ……ッ!」
私の髪を鷲掴みにして、後頭部を押さえつけて、口内に無理やり陰茎を捩じこんでくる、この人は誰──?
やめて。やめてよ。
そう言葉にしたいのに声が出ない。怒張した彼のモノが喉をついて、思わず嗚咽が漏れそうになる。
いやだ。苦しい。
息が、酸素が、足りない。
「…………バカな女」
ぐちゅ ぬちゅっ
止まない水音と、冷たい声。
「のこのこホテルまで付いてきた癖に、そうやって、自分が一番傷ついたような顔してる」
どうして……?
どうしてそんなこと言うの。そう問いたくて、息苦しさに喘ぎながら彼をみて、私は初めて知った。
知ってしまったのだ。
彼が、すごく悲しそうな顔をしているということを。