• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第4章  愛すべき泥濘で口付けを (R18:黒尾鉄朗)



 *


 306号室と印刷されたレシートを持って、狭いエレベーターを後にする。

 薄暗い廊下。
 バニラの匂い。

 非常口から数えて二番目のドアを開けると、暗かったはずの照明が自動的に明転した。

 枕元にはコンドームがふたつ。
 木編みの箱に入れられたそれを見て、絢香が咄嗟に顔を外らす。


「私、初めて来た……ラブホ」

「へえ、そう」


 会話は続かない。
 別に、続ける気もない。

 身体の中心で蠢めく感情を抑えるのに必死で、他のことに構っている余裕がないのだ。

 それは、どろどろと。

 全身を這いずり廻るようにして俺を、こころを、醜くさせる。


「入る? 風呂」

「えっ、あ、うん……そだね」

「一緒に?」

「……っばか!」


 なあ絢香、お前、木兎に何回抱かれたの。どんな顔してあいつを受け入れてたの。

 笑ってた? 幸せだった?

 どろ、どろ、どろ。

 汚い感情で、息ができない。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp