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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 鮮やかな青と白のコントラストが第一ターミナルに滑り込んだ。

 爽やかな配達員さんに化けていた彼らだったが、佐久早逮捕の報らせを受けた今となってはそれも必要ない。

 利用客がまばらな夜の空港。
 本日分の離陸便が残りひとつとなった出発ロビーに、複数の足音が響く。


「俺、空港ってはじめて来た!」

「……あのね、お前、声でかい」


 瞳をキラキラさせているのはもちろん光太郎で、その隣を終始呆れ顔の花巻くんが歩いている。

 呑気なもんだ、全く。
 溜息がちに独りごちる岩泉さんの声は、ほんのちょっぴり悲しげで。

 縦に長く長く、どこまでも伸びるロビーを歩く。歩く。歩く。

 徐々に見えてくる搭乗口。
 国際線NH6673便と書かれた電光掲示板の下、ゲートカウンターの前で客室乗務員が笑顔を浮かべている。



「──……俺たちはここまでだ」
 岩泉さんが、その歩みを止めた。

「向こう行っても元気でな」
 次に花巻くんが立ち止まって。

「めちゃくちゃ幸せになれよ!」
 最後に光太郎が別れを告げる。



 泣かない、って、決めたのに。

 涙が邪魔をしてゲートが潜れない。足が動こうとしない。チケットを確認している客室乗務員が、怪訝そうな面持ちになる。


 トン、と背を押されて。


 ばいばい、カオリ。
 光太郎の声が聞こえた。

 慌てて振り返るともうそこには誰もいなくて。広大なターミナル。がらんとした景色。




 ──……ありがとう、皆。

「……っ、……ばいばい」




 眦からあたたかい滴。
 ほろほろと零れて、止めどなく。

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