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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 未来へと繋がるボーディング・ブリッジを、ひとり、鼻を啜りながら歩いた。

 ぱらぱらと人影。
 他の乗客に混ざって飛行機に乗りこみ、キャビンアテンダントの営業スマイルに会釈を返す。

 一歩、踏み出して。

 すぐに彼を見つけた。

 向かって左側の五列目。頬杖をついて窓の外を見やる横顔。その涼しげな目元。間違いない。

 見間違えるはずがない。









「──……京治さん」










 数年振りに呼ぶ彼の名前。
 語尾に、疑問符を付けて。

 私の問いかけに弾かれたように、それでいて、ゆっくりと視線を動かす彼。

 京治さんが私を見て。
 視線がぶつかって。

 それから、それから──



「…………っ、!」



 彼は何も言わずに私を抱き締めた。きつく。きつく。息ができないくらい。

 感じる彼の体温。
 感じる彼の香り。
 感じる彼の鼓動。

 ああ、──本当に会えた。

 本当に本当に、京治さんだ。
 私の愛した人がここにいる。

 もうどこにも行かないで。
 絶対に離れていかないで。

 彼の背中に回した手。強く。強く。二度とこの手からこぼれてしまわないようにと、幸せを抱き留める。



「──……会いたかった」



 彼が溢したのは、涙混じりの。

 何を言おう。
 何から話そう。
 何て囁こう。

 話したいことばかりなの。聞きたいこともたくさんある。語らいたいこと、伝えたいこと、あなたと交わしたい言葉。

 たくさん、たくさんあるけれど。

 今は、これしか思い浮かばなくて。







「「愛してる」」

 今でも、これからも、ずっと。









 二人一緒に囁いた愛が重なって、それがなんだかおかしくて。

 私たちは、同時に笑った。





【holy war】fin.
飛べ、希望の大空へ
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