第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
「ゲームオーバーだね、佐久早」
彼女に扮していた彼、孤爪が言う。
「研磨ちゃんてば名演技☆」
助手席の男、及川がウインクをして。
「こんなに走ったの久々だわ」
運転席の男、松川が溜息をついた。
「鬼ごっこは楽しいデスねえ」
ボディガード役の天童は楽しげだ。
孤爪率いる第二班にまんまと騙された佐久早は、悔しさと怒りを舌打ちに乗せて吐き出した。
その刹那の出来事だ。
カッ、と一閃。
強力な光が佐久早の視界を奪う。
あまりの眩さに目を閉じた彼が、次に見た景色。それは空港中を染める赤。滑走路を埋めつくす警察車両の海。
光は犯人捜索時に使用されるサーチライトで、赤はパトカーに搭載された赤色灯だった。
「銃刀法違反の現行犯で逮捕だ。ザマァねえな、井闥山組の幹部さんよ」
研磨たちの反対側。
搭乗ゲートのほうから姿を現したのは他でもない。
警視庁マル暴第五課課長、黒尾鉄朗だ。複数の制服警官を従えている。
「……っ、クソお巡り」
部下共々お縄につくことと相成った佐久早。彼は憎たらしげにそう漏らし、黒尾の口からお約束の【あれ】を聞く羽目になるのであった。
「お巡り “ さん ” だろがクソガキ!」
もちろん、拳骨付きで。