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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




「……そん、な、」


 絶望の壁。
 またも、幸せを阻むのか。

 彼女の唇から悲嘆が漏れた。色鮮やかなルージュ。目の醒めるような赤。走ることを止めたピンヒールと、同じ色。


「はーい、捕まえた」


 佐久早の声が淡々と空気を揺らした。

 絶望に打ちひしがれる彼女は壁のほうを向いたまま。共に駆けていた男たちも沈黙して俯いている。


「これで女は完了、あとは京治だな」


 不気味なまでに落ちついた台詞に混ざって、カチリと金属音。それは、拳銃の撃鉄を起こす音だった。

 ひたり
 ひたり

 眼を血走らせている部下を退けて、佐久早が先頭に躍り出る。


「おい女、京治はどこだ、答えろ」


 銃口を向けられる気配。
 答えなければ殺される。

 前方は壁、背後には敵。

 絶体絶命の窮地に立たされた彼女は、観念したかのように両手を挙げてみせて──……







「京治? さあね、今頃空じゃない?」








 ──嗤った。

 佐久早が疑問の声を漏らす暇もなく、嘲笑を携えた彼女が振り返る。

 その、顔面。
 猫のような瞳。

 背格好や髪型はたしかに彼女そっくりだが、彼女じゃない。カオリじゃない。

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