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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



【足止めは成功】
【でも、バレたみたいだよ】
【鼬が動きだした】

 薄暗がりの車内で灯るトーク画面に、数件のメッセージが表示されている。


 鼬、──やっぱりサクサか。


 トラックの助手席に腰かける男はぼそりと呟やき、それから唇を真一文字に結んだ。

 佐久早聖臣。

 組解体により雲隠れを余儀なくされたウシワカの腹心にして、白鳥沢組残党の筆頭だ。

 赤葦の出所と、その最愛の所在。
 それらの情報を掴んだ牛島から「報復せよ」との命を受けた彼は、虎視眈々とその機会を伺っていた。


 赤葦と、カオリ。


 その両者をひと息に略取する絶好のチャンスを、──今日、この時を、今か今かと待ち続けていたのだ。
 

「鼬が追ってくるってよ」


 助手席の男がスマホにロックをかけながら言った。

 すると、今度は運転席にてハンドルを握る男が短かく答える。


「来る、じゃない、もう来てる」


 その緊迫した声音。

 サイドミラーに素早い視線を走らせると、なるほど確かに、後方三台目に見えるワンボックスカーは普通じゃない。

 フロントガラスに至るまで遮光フィルムが貼られたフルスモーク。漆黒の影。

 追手が、既に背後まで迫っている。

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