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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 仕切りなおして、現在。

 私はピンクオウルに別れを告げ、とある車両の荷台にて待機をしていた。

 運送業者を偽装したトラック。
 共に乗りこんだのは岩泉さん率いる第一班の面々だ。


「んな泣くなって、な?」


 大きな手が濡れた頬を拭う。
 ちょっと乱暴で、強引で、でもすごく優しい。光太郎の手だ。ゴツゴツしてて骨張ってる。

 初めて彼と出会ったのが、あのお店だった。私たちの古巣。桃色の梟が舞う。

 恐らく、もう二度と戻ってはこられないだろう。

 良きも悪しきも私の全てだった。心寄せる場所だった。──宿木、だった。


 でも、これで最後なのだ。


 この町とも、もうお別れ。

 めそめそ泣いている場合じゃないのは分かっているのだけれど、溢れる涙は止めどなく。

 ほろろと落ちるそれが光太郎の衣服を濃青に染めていく。


「なにもこれが最後だって決まったワケじゃねえだろ? ポジティブイズジャスティス!だぞカオリ!」


 おどけたようにそう告げる彼は、いつもの着崩したスーツ姿ではなくて、青い作業服にその身を包んでいた。

 服とおなじ色のキャップ帽。
 目深に下げられた鍔が落とす影。その奥で燃ゆる黄金は、どこまでもまっすぐに未来を見据えているようだった。


「だから今は、生きることだけ考えろ」


 力強い彼の言葉。
 すごく、頼もしくて。

 甘えたでワガママで子供みたいなことばかり言ってた光太郎。いつの間にか大人になったんだね。それだけ、時が経ったんだ。

 ──私もいい加減、成長しなきゃ。

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