第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)
chapter004
【FLOWERWALL:holy war】
嘘のような七日間だった。
それは同時に奇跡にも等しくて、永遠にも感じられて。しかし時間はたしかに流れていく。移ろっていく。
風に押されて流れる雲のようにゆったりと、だが着実に、私たちは終幕へと歩みを進めていた。
「──……いよいよ決行だ。お前ら、準備はいいか」
京治さんの出所を数時間後に控えた今、ピンクオウルでは黒尾を中心とした最終確認が行われている。
研磨が立案した作戦。
京治さんと私を無事引き合わせて、海外に逃がすまでの。
元来性的なサービスを提供することが目的の部屋に集結したるは、大柄な男性ばかり。
要するに、なんていうか。
「及川てめっ、近寄んな気色悪い」
「狭いんだから仕方ないじゃん!」
「むっ!? どさくさに紛れてウチの店ディスってんじゃねえぞ及川コラ!」
「お前らまた喧嘩してんのかよ」
「ほっとけ花巻、構うだけ無駄」
「松川くんはオトナですねえ」
むさくるしいのだ。
ものすごく、むさくるしい。
人口密集率が半端ないことになっているし、徹くんと光太郎がぎゃいぎゃい騒ぐもんだから余計に暑苦しい。
決戦の日とも呼べる今日。
人一倍神経を尖らせているのは、やはり警察関係者であるこの人で。
「っるせええ! 光太郎!徹! お前らそれ以上騒いだら廊下に立たせんぞボケタコ!」
言ってることは公務員ぽいのに、顔はそこらへんにいる凶悪犯より怖い。昔も今も変わらない、正義のひと。
黒尾鉄朗の姿がそこにはあった。