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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 孤爪による【作戦】の説明が為されたあと。プレイルームを満たすのは再びの静寂だった。


「……海外、かあ」


 ぽそりと呟いたカオリ。

 スケールが大きくて驚いちゃった。
 おどけたような声音で言ってみせてはいるが、唇は小刻みに震えていて。

 その震えを誤魔化そうとしたのか、彼女はやおら立ち上がってパソコンに手をかけた。

 店のスタッフルームから拝借した年代物。切電されたビデオ通話。

 灯った液晶は、特徴的なライトブルーに塗りつぶされている。

 カオリの指がすすと動いて、マウスカーソルが閉じるボタンに到達した。



「──……カオリ、お前さ、俺たちに流されてるだけじゃねえの?」



 それは、あまりにも唐突な。

 人ひとり入るのがやっとのシャワーボックス。そのスライドドアに背を預けたまま、木兎が鋭い低音を響かせた。

 閉じかけの通話画面。
 静止した、カオリの指。


「……、……え?」


 彼女はそう答えるだけで精一杯。

 震えているのは今や唇だけではない。
 かちかちと音を立てるのは、マウスパッドに触れた彼女のネイルだろうか。

 カオリの顔に明らかな動揺が浮かぶ。


「守るよ、俺は。自分が死んででもお前を守ってやりてえ。京治くんにくれてやんのは悔しいけど、それでも。お前が幸せになれんならそれでいいよ」


 木兎の声に宿る熱。

 静かに燃ゆる双眸の黄金が、カオリを捕らえて離さない。


「けどさ、お前はどうなの? 俺たちに守られる覚悟あんの? お前の口から一回でも出たか、幸せになりてえ、って言葉。出てねえだろ」

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