• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 僅かな間ではあったが、同じ高級ソープ店の従業員として働いていた二人。

 天童とカオリの視線がぶつかって、数秒。奇妙な沈黙が流れていく。


「皆さんを守る。組の内情を密告する。それが俺のオシゴト。お約束します、──……ただ、ひとつ条件が」


 条件?

 誰かが小さく漏らした。
 ある者は身構え、ある者は神経を尖らせ、またある者は一抹の不安を抱く。天童のいう条件とは一体何なのか。


「俺はね、組織だとか忠誠だとか、そんなことはどーーでもいいんデスよお。求めてるものは、……ひとつだけ」


 緊張の一瞬。
 その、直後。


「俺のトモダチになってくれますか?」


 ……え?
 ……は?
 ……ん?

 その場にいる全員がぽかんと口を開ける。開けて、そのまま塞がらないといった様子で呆然とした。

 カオリをジッと見つめたままの天童が放ったのは、なんとも拍子抜けな。

 友達になりたい。
 そうねだる天童は「……ダメ?」と悲しげな表情で言葉を足した。パチンと弾かれるカオリの意識。


「っう、ううん、だめじゃないよ」

「! ホント?」

「うん、本当。よろしくね天童くん」


 カオリが快く条件を受けいれた刹那。

 パアア!と表情を晴れさせた天童が、勢いよく彼女に駆け寄った。反射的に臨戦態勢をとるのは黒尾と岩泉だ。

 しかし、当の本人はそんな彼らの心配など露知らず。


「うっれしいなー、出てこい俺のトモダチ! なんちゃって!」

「っわ、ちょ、ブンブンしすぎ」

「カオリはアイス好きですか? 買ってくるから一緒に食べませんか? 駅ビルにいいお店ができたんですよお」


 カオリの両手を握って上下に揺らす天童は、心底楽しげに声を弾ませ続けるのであった。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp