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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




 *



「つーわけで、部屋、空けろや」


 深紅のネクタイを緩めつつ言うのは黒尾鉄朗だった。

 かつて一番街を有する地区の駅前交番に務めていた彼は、現在、警視庁組織犯罪対策部に属している。

 通称、マル暴。
 ありていに言えば暴力団専門のお巡りさんだ。異例の速さで第五課課長に就任した彼はマル暴の若きエースである。


「んん頼み方! 恐喝かよ!?」


 オーバーリアクションでツッコんでみせるのは木兎光太郎。ここピンクオウルの雇われ店長だ。

 数年前は雑用ばかりを押しつけられていた彼だが、数年経った今でも、押しつけられるのはやっぱり雑用だった。

 彼曰く、ローションプレイの後始末が一番「マジ最悪!」らしい。


「カオリを守るためだってのに俺の言うことが聞けねえのか、あ゛ァ?」

「カオリのことは守るに決まってんだろ!? お前のそーゆー言い方が気に食わねんだよ! お巡りだからって偉そうにすんな!」

「お巡り、さん、だろがクソガキ!」

「俺はもうガキじゃねえの! 立派なオトナなの!」


 ピンク色の照明が焚かれたフロア。空間を満たすのは大音量のトランスミュージックとお香の匂い。

 それから、自称大人たちの口喧嘩だ。

 各プレイルームで待機していた風俗嬢たちが「なんの騒ぎ?」と顔を覗かせているが、しかし、彼女らは黒尾の顔を見るなりすぐに姿を隠してしまう。

 夜の住人にとってお巡りさんは天敵。

 とくに悪いことをしていなくても極力関わりたくないし、白黒ツートンの車両を見つけた瞬間にドキッとするあれは、もはや本能行動のそれに近いのだ。

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