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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 俺は、救いたい。

 カオリを。
 その心を。

 彼女を守りたい一心でその身を呈した赤葦も、岩泉も、全部全部。

 もう誰も苦しまなくていいように。あいつらがまた、笑って過ごせるように、平穏な日々を取り戻してやりたい。

 胸が熱いんだ。
 きっと、愛のせいで。

 恋しいとか、愛しいとか、そういうのとは少し違くて。それは、そう。まるで家族を想うかのような。



 ──愛してるんだ、彼らを。

 彼らに出会わせてくれた、この町を。



 警官になって初めて配属された町。国随一の歓楽街。どうしようもなく爛れた肉欲の巣窟。

 でも、そんな町にも、人間がいる。
 薄汚れた夜の町にも、人間はいる。


 生きてるんだ、皆。


 身体張って、春をひさいで、心までボロボロにして、それでも生きてる。地べた這いつくばるような努力して、苦しんで、それでも歯食い縛って生きてる。

 それは自分の命を繋ぐためだったり、誰かの命を支えるためだったり、夜に従事する理由は人それぞれだけど。

 皆、同じ。

 好きで夜やってる奴なんか、どこにもいなくて。皆何かしら傷を抱えてて、でも辛いこととか全部腹んなかに隠して、そうやって必死に生きてんだ。

 それが、この町。
 俺が見てきた町。

 何が何でも守ってやりてえ。
 絶対守ってやる、そう思う。



「──……わあ、懐かしい」



 壁一面にピンクチラシが貼られたエレベーターの箱内。上昇する階数表示。

 少し震えた声で言うカオリの手を強く強く握りなおして、俺は、大きく大きく息を吸った。

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