• テキストサイズ

(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




『……っアイツを、助けて下さい』


 カオリは、赤葦の苦悩に気付いてやれなかった自分を責めるあまり、摂食障害になってしまったらしかった。

 赤葦本人から彼女を託されたと話す岩泉もまた、精神的に限界を迎えているように見えた。

 白鳥沢の脅威から逃げる日々。
 頼れる人なんて、誰もいない。

 悩んで悩んで、悩んだ末、岩泉は俺に助けを請うことを決めたのだという。

 それは、カオリが歩くことさえ困難になってしまったある日のことだった。

 藁にも縋る思いだったのだろう。
 沢山沢山、苦しんだのだろう。

 クマだらけの窶れた顔で『助けて下さい……!』と叫ぶ岩泉は、涙もろくに流せないほど衰弱していて。

 救ってやりたいと思った。
 守ってやりたいと思った。

 それが警官である自分の役割なのだと強く思ったし、今ではある種の使命感すら抱いている。


「いいか? ちっとでも辛いと思ったらすぐ言えよ。岩泉もそのうち来るっつってたから、連れて帰ってもらえ、な?」

「もー……分かったてば、しつこい」

「っ、こんのクソガキ、人の心配をしつこいとは何事だ犯すぞこの野郎」

「いだだっ、ごめん、ごめんなさいするから頬っぺたつねらないでよ巨人族」


 カオリとこんな風に軽口が叩きあえるようになったのは、医者のおかげ。

 仕事柄そういう相談、──犯罪被害者の心のケアに関する話を聞くことも多くて、彼女にはすぐに病院を紹介してやれた。もちろん、岩泉にも。

 カウンセリングと、ミーティングへの参加。それから俺による食育指導。

 まあ、要は飯食わせ係だ。

 俺が助けてやれるのはそこまでだったけど、岩泉の看病の甲斐もあって、カオリは普通の生活を送れるようになるまで回復していた。

 あとは、その傷の根源。

 赤葦との再会を果たさせてやるだけだった。それが俺の使命。

/ 454ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp