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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)



 季節と共に移ろうのは景色だけじゃない。数年前に取り壊されてしまった劇場の跡地を眺めて、ぼんやりと思う。

 人もまた、変わるのだ。

 そこに善し悪しはあれど、皆何かしら変わっていく。移ろっていく。そうして月日は流れていく。

 ただ、彼女は──


「……本当に大丈夫か?」

「ん、大丈夫、ありがと」


 カオリだけは何も変わらないまま、変われないまま、ずっと。




 ──……京治さん、嫌っ、イヤァァ!




 あの日に取り残されている。

 あの日の悪夢に囚われて、蝕まれて、今でも苦しんでいる。

 あの日から、彼女は笑わない。
 笑うという行為そのものが分からなくなってしまったのだと、彼女はそう言っていた。悲しげに伏せられた睫毛。

 救ってやりたくて。
 守ってやりたくて。


「無理してんじゃねえの?」

「もう、黒尾ってば心配しすぎ」

「そりゃ心配もするだろうよ」

「……相変わらず過保護なんだから」


 努めて明るく振る舞おうとするカオリの手を引いて、華やいだ夜を行く。

 元来華奢な体型の彼女。
 更に痩せてしまった手。

 赤葦が自首して三ヶ月が過ぎた頃だっただろうか。

 当時、俺が勤務していた交番に転がりこんできた岩泉の、切羽詰まった顔を思い出す。

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