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(R18) 行かないで青春 (HQ)

第20章 最愛(Moulin Rouge完結篇)




『で、進捗は?』


 そんな俺の問いを聞いてか聞かずか、及川は頬をむくれさせたまま言葉を並べていった。


『大体ね、岩ちゃんは詰めが甘すぎるんだよ。カオリちゃんの隣の部屋に住んでることもバレバレだし、探偵雇わなくたって調べが付いちゃうレベル。もう全然だめ。まるでなってない』


 及川が言い終えた直後に岩泉のミドルキックが炸裂したのだが、まあ、それは置いておくとして。

 白鳥沢の牙城が崩落した今。
 カオリの安全を確保することは、俺たちにとって最重要事項である。

 かつてこの町の夜王にまで昇りつめた男、及川徹には考えがあるらしかった。


『ねえ、鉄っちゃん』

『何だよ、つーかその呼び方ヤメロ』

『こんな言葉を知ってるかい?』

『無視してんじゃねえぞコラ』


 彼は告げた。
 花よりも美しく、蝶よりも妖艶に微笑んで。



『木を隠すなら森に、だよ』



 おまけにウインクが付いていたことで俺(と岩泉)がイラッとしたことは言、──以下省略。

 こうして、俺はカオリを連れてあの場所を訪れることになったのである。

 彼女の、宿り木だった場所。

 カオリにとって最も思い入れが深く、そして二度と思い出したくない記憶が詰まっているであろう、夜の一番街。

 そのメインストリート。
 小さな雑居ビルの六階。

 彼女の物語が始まった風俗店、──ファッションヘルス【pink owl】だ。

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